報復の恐怖による攻撃性の抑制
攻撃性がどのような状況で抑制されるのか調べた1977年の研究
報復の危険性がない場合、復讐を行う動機が高い人は攻撃性が上昇するが、報復される危険性がある場合には攻撃性は抑制されることが判明
SNSを見ていると、日々何らかのことで炎上が発生しており、リプライでは罵詈雑言の応酬がすごいように感じます。
これらは構造的に簡略化すると、Aが投稿した内容が癇に障るBがAに対して攻撃行動(罵詈雑言は間接攻撃の1種)を行うというものになります。
なぜBはAに文句を言ったりするのでしょうか?
現実場面でも同じようにBは癇に障ることがあればすぐさま文句を言うのでしょうか?
SNSと現実場面での攻撃性を検討するには1977年の古典的な研究が参考になります。
この研究では攻撃性がどのような状況で抑制されるのかを調べました。
先ほどと同じように、この実験では参加者(B)は他者(A)によって心理的に傷つけられており、復讐する動機が高い状態を作っておきます。
その後、参加者が他者に対して復讐を行うかどうかが自分がその後に報復される危険性があるかどうかによって影響を受けるのか検討しました。
その結果、報復の危険性がない場合、復讐を行う動機が高い人はそのまま攻撃性が上昇するが、報復される危険性がある場合には攻撃性は抑制されることが判明しました。
つまり、SNS上で日々多くの人々が罵詈雑言を平気で吐くことができるのは、現実場面と大きく異なり、その匿名性が関係している可能性があるというわけです。
現実の場面では、目の前で他者に文句を吐けば、すぐさま復讐されてしまい、その影響を止めることはできないかもしれません。
しかし、SNS上では自身が傷つくことなく他者に心理的に危害を加えるということができます。
SNSで罵詈雑言を吐く人も現実ではもう少し優しい人たちなのかもしれません。
参考文献:
Diamond, S. R. (1977). The effect of fear on the aggressive responses of anger aroused and revenge motivated subjects. The Journal of Psychology, 95(2), 185-188.