子どもの数と不貞確率の変化
チマネ族を対象に子どもの数によって男性の不貞確率が変化するのか調べた2007年の研究
男性は扶養している子どもの数が多くなるにつれて不貞を犯す可能性が低下する
婚外交渉は子どもに投資する機会や繁殖が失敗する可能性との関係によって調整されることを示唆
進化心理学ではよく男性を浮気男タイプ(Good Gene)と堅実な父親タイプ(Good Dad)に分けると思われがちですが、話はそう簡単ではありません。
個人を取り巻く状況によって、個人が多くの異性を獲得しようとする動機は変化するのです。
このことがよくわかる研究が2007年に行われていますので、見てみましょう。
チマネ族を対象にしたこの研究では子どもの数によって男性の不貞確率が変化するのか調べました。
もし浮気男は一生変わらないという仮説が支持されるのなら、男性の不貞確率は子どもの数が増えても変化しないはずです。
もし浮気男の不貞確率が子どもの数が増えるにつれて変化するのであれば、なんらかの説明が必要でしょう。
結果は、「男性は扶養している子どもの数が多くなるにつれて不貞を犯す可能性が低下する」というものでした。
つまり、婚外交渉(不貞)は子どもに投資する機会や繁殖が失敗する可能性との関係によって調整されることを示唆しています。
言い換えるのであれば、子どもがまだ生まれていない時、男性は妻との間に子どもが出来ず、繁殖に失敗してしまうリスクを抱えるので、その時期には男性は不貞を犯す可能性が高まるわけです。
また、子どもが産まれても、その数が少なければ、男性は子どもへの投資を行うのか他の女性との間に新しく子どもを作るのかという選択肢の間で悩むことが出来ます(どちらにせよ適応度は上昇する)。
しかし、子どもの数がさらに増えた場合、男性が婚外交渉を行うことは自身の既に生まれている子どもたちへの投資が犠牲になり、割に合わなくなるかもしれません(新しく子どもを作っても、既に長く生きている子どもへの投資が大幅に犠牲になってしまうなら、子どもを新しく作らない方が適応度は上昇する)。
その結果、男性は子どもの数が増えると不貞を犯す可能性が減少するわけです。
浮気男は子どもが多く生まれると改善されるのかもしれません。
参考文献:
Winking, J., Kaplan, H., Gurven, M., & Rucas, S. (2007). Why do men marry and why do they stray?. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, 274(1618), 1643-1649.