友人と道徳化
道徳化(ある行動を不道徳なものとして主張する)は個人が搾取から身を守る為に第三者を巻き込もうとする戦略
社会的な味方が少ない個人は道徳化を行いやすいと予測(2013年)
予測と一致し、国際的な大規模調査(32ヵ国)は友人が少ない個人ほど道徳化を行いやすい、これは交配の領域と(程度は小さいが)協力の領域の両方に当てはまり、友人が少ない個人は自分の好みに反する行動でさえ道徳化する傾向があることを明らかに
複雑な人間関係の中に生きている私たちはしばしば自分の行動や信念を正当化するために多様な戦略を用います。
その中でも、「道徳化」という現象は興味深いものです。
道徳、そして道徳化をどう捉えるかということは分野や研究によって異なると思いますが、Petersen (2013)は道徳化(ある行動を不道徳なものとして主張する)は個人が搾取から身を守る為に第三者を巻き込もうとする戦略のこととして捉えています(極端に言ってしまえば、個人が興味があるのは道徳そのものではないということ)。
〇〇してはいけないとか〇〇するなんておかしいと他人を積極的に批判する人はいると思いますが、なぜ道徳化を行うのかということは搾取から身を守る為の戦略として捉えると分かりやすいのかもしれません。
この研究では、道徳化は主に社会的な見方がいない個人間で使用される戦略として捉えています(搾取から身を守る方法は協力者がいることで、協力者が少ないほど道徳化によって他人を巻き込む必要があるということ)。
国際的な大規模調査(32ヵ国)は事前の予測と一致し、いくつかの興味深い結果を示しています。
まず、友人が少ない個人ほど道徳化を行いやすかったことです。
また、この結果は領域固有というわけではなく、交配の領域と(程度は小さいが)協力の領域の両方に当てはまりました。
特に面白いのは、友人が少ない個人は自分の好みに反する行動でさえ道徳化する傾向があったということかもしれません。
これは、進化的な観点からヒトの心理を扱う進化心理学だけに当てはまることではありませんが、心理学の面白いところは、道徳とは何か?や善いことは何か?悪いことは何か?という哲学的な問いを直接検討するのではなく、人間はどのようなことを道徳として捉えるのか?どのようなことを善いこととして捉え、悪いこととして捉えるのか?という問題に置き換えることで、データによる実証的な検討を可能にしているということだと思います。
参考文献:
Petersen, M. B. (2013). Moralization as protection against exploitation: do individuals without allies moralize more?. Evolution and Human Behavior, 34(2), 78-85.