生産性と長期的なリターン
日常的に食べ物不足に陥る可能性の低い(常に生産量が高い)個人がなぜ食べ物を分け合うのか調べた2000年の研究
アチェ族から得られたデータによれば、平均よりも多くの食べ物を生産し共有している人々は平均よりも少ない食べ物しか生産せず共有しない人々よりも怪我や病気の際に多くの食べ物を分けてもらえる
食べ物の共有行動の短期的なコストは長期的なリターンによって補える可能性を示唆
なぜ集団で暮らす人々は食べ物を分け合うのでしょうか?
有名なチスイコウモリの話を知っている方は、「食べ物が無い時に助けてもらう為」と考えるかもしれません。
もちろん、このような考え方は十分に検討されていますが、それでも謎は簡単には解決しません。
なぜなら、日常的に食べ物不足に陥る可能性の低い(常に生産量が高い)個人が食べ物を積極的に分け合うという不可解な現象があるからです。
つまり、明日や明後日の食べ物が無くなることをそれほど心配しなくても良い個人も食べ物を分け合うことがあるのです。
Gurven et al. (2000)はアチェ族から得られたデータを使って、この問題に取り組みました。
その結果、平均よりも多くの食べ物を生産し共有している人々は平均よりも少ない食べ物しか生産せず共有しない人々よりも怪我や病気の際に多くの食べ物を分けてもらえることがわかりました。
つまり、食べ物の共有行動の短期的なコストは長期的なリターンによって補える可能性を示唆しているわけです。
将来の食料不足に備えるという同じような観点でも、短期的なリターンに注目するか長期的なリターンに注目するかでは予測の立て方やデータ収集、分析の方法、そして結果の解釈も変わることがわかる良い例です。
参考文献:
Gurven, M., Allen-Arave, W., Hill, K., & Hurtado, M. (2000). “It's a wonderful life”: signaling generosity among the Ache of Paraguay. Evolution and Human Behavior, 21(4), 263-282.