ポルノと性的攻撃性の関連のメタ分析
1970年代からの59の研究、73の効果量についてメタ分析を行い、非暴力的なポルノ(相関/縦断/実験/人口)と暴力的なポルノ(相関/実験)が攻撃性と関連しているか調べた2022年の研究
非暴力的なポルノが攻撃性と関連しているという証拠は相関研究、縦断的研究、実験からは見つからなかった
非暴力的なポルノはマクロレベルでは有意な関連があったが、その解釈は「ポルノの消費量の増加は性的攻撃性の低下と関連している」というものであった
暴力的なポルノが攻撃性と関連しているという証拠は実験では見つからず、相関研究で見つかった平均効果量も小さかったことから、証拠は限定的であると解釈された
ポルノは攻撃性と関連しているのでしょうか?
例えば、よくポルノを見る人は攻撃的であったり、レイプを行いやすくなったりするのでしょうか?
このような議論は過去数十年間行われてきましたが、議論は今だに続いています。
しかし、(科学的な)研究の良いところは、今までに集められた証拠をまとめて分析することができるというわけです。
1970年代からの59の研究、73の効果量についてメタ分析を行い、非暴力的なポルノ(相関/縦断/実験/人口)と暴力的なポルノ(相関/実験)が攻撃性と関連しているか調べた2022年の研究を見てみましょう。
少し研究の種類の説明をすると、相関研究とはポルノを使用している頻度が高い人とその人の攻撃性を調べるようなもので、縦断的研究とはポルノを使用している人がその後攻撃行動をしやすいのかなどを追跡していくもので、実験とは独立変数(この場合はポルノを見せたりなど)が従属変数(この場合は攻撃行動など)に影響を与えるか調べるようなもので、人口とは集団レベルで相関関係を見たりするものです(どの研究手法にもメリット、デメリットがあります)。
メタ分析に含まれていた全ての研究が同じ手法を使うわけでもありませんので、上記はあくまで目安です(例えば、単に縦断的調査を行う場合もあれば、介入効果を縦断的に見る場合もあります)。
このメタ分析で特徴的なのは、ポルノの種類を暴力的なものと非暴力的なものに分けているところです(そのおかげで暴力的なポルノでは利用できる研究内容が相関と実験のみになっていますが...)。
結果を見てみると、非暴力的なポルノが攻撃性と関連しているという証拠は相関研究、縦断的研究、実験からは見つかりませんでした(平均効果量の信頼区間が0を含んでいる)。
また、非暴力的なポルノはマクロレベルでは有意な関連があったが、負の相関関係でしたので、その解釈は「ポルノの消費量の増加は性的攻撃性の低下と関連している」というものでした。
また、暴力的なポルノが攻撃性と関連しているという証拠は実験では見つからず、相関研究で見つかった平均効果量も小さかったことから、証拠は限定的であるとこの研究では解釈されています。
メタ分析はすでに行われた研究を比較できるという強力な手法で、証拠としても高いレベルとして位置付けられますが(私はこう思う。僕はこう思う。という主観的な意見を客観的なデータにするのが研究だとしたら、個々の研究をまとめ上げてさらに客観性の高いデータにするのがメタ分析)、メタ分析同士が異なる結果を示す場合もありますし、研究の採択基準や分析手法も様々であるということには注意が必要です。
参考文献:
Ferguson, C. J., & Hartley, R. D. (2022). Pornography and sexual aggression: Can meta-analysis find a link?. Trauma, Violence, & Abuse, 23(1), 278-287.