Intrasexual competitionと女性の怒り
女性が他の女性との対立にどう対処しているか調べた2015年の研究
女性は怒りを隠蔽する可能性が高い為、他の女性の表情に怒りを見出すバイアスがかかり、そのようなバイアスは他の女性から攻撃されやすいターゲットほど大きいのではないかという仮説を検証
他の男性や他の女性に対して怒っている男性と他の男性に対して怒っている女性は怒りをあからさまに表出する可能性が高いが、他の女性に対して怒っている女性は怒りを隠蔽する可能性が高いという結果が得られた(研究1)
(男性ではなく)女性は中立的な女性の顔に怒りの表情を見出す可能性が高いという結果が得られた(研究2)
自己報告した配偶価値(例:異性は私に惹かれている)やソシオセクシャリティ(例:愛のないセックスはOK)が高い女性ほど中立的な女性の表情に怒りを見出す可能性が高いという結果が得られた(研究3)
進化心理学の分野では男性同士の争いがよくあるテーマの1つですが、女性同士も争いをしないわけではありません。
むしろ、進化心理学的な仮説や予測を検討する上では、(男性と比べて)女性同士がどのように争い、どのように争いを避けるのかということを研究することは非常に重要です。
女性が他の女性との対立にどう対処しているか調べた2015年の研究を見てみましょう。
この研究では、女性は怒りを隠蔽する可能性が高い為、他の表情に怒りを見出すバイアスがかかり、そのようなバイアスは他の女性から攻撃されやすいターゲットほど大きいのはではないかという仮説を検証しています。
きっと、日常会話ではこれくらいの仮説を考えたり、予測を立てたりするかと思いますが、実際に検証するとなるととても大変です。
そもそも女性は怒りを隠蔽する可能性が高いのかを確認しないといけませんし、本当に他の女性の表情に対して怒りを見出しやすいのか、または女性間で見られるバイアスの大きさが予測された方向なのかということを順序よく確認しないといけません。
まずは、研究1です。
研究1では男性と女性が怒りを表出する可能性が高いのか検討しています。
その結果、他の男性や他の女性に対して怒っている男性と他の男性に対して怒っている女性は怒りをあからさまに表出する可能性が高いが、他の女性に対して怒っている女性は怒りを隠蔽する可能性が高いという結果が得られました。
まずは、第1段階の確認が済んだわけです(この結果が得られただけでも、心理学的には非常に興味深いことになります)。
次に、実際に女性が他の女性の表情に怒りを見出す可能性が高いのかという点についての検討ですが、研究2では(男性ではなく)女性は中立的な女性の顔に怒りの表情を見出す可能性が高いという結果が得られていますので、これも事前の予測通りというわけです。
最後に、自己報告した配偶価値(例:異性は私に惹かれている)やソシオセクシャリティ(例:愛のないセックスはOK)が高い女性ほど中立的な女性の表情に怒りを見出す可能性が高いという結果が研究3で得られました。
このことから、この研究では事前の仮説を支持し、女性同士の争いでは怒りが隠蔽される可能性が高い為に、女性は他の女性の怒りに敏感(バイアスがかかる)で、そのようなバイアスは怒りのターゲットになりやすい女性(配偶価値が高い女性や性的に奔放な女性)ほど大きい(事前に対処できる可能性が高い)ということになります。
直接争う男性同士、間接的に争う女性同士という関係がこの研究からは垣間見えるわけです。
参考文献:
Krems, J. A., Neuberg, S. L., Filip-Crawford, G., & Kenrick, D. T. (2015). Is she angry?(Sexually desirable) women “see” anger on female faces. Psychological science, 26(11), 1655-1663.