進化的適応環境と想像上の友人
ヒトは進化的適応環境(EEA)に存在しなかった存在を理解することが困難である為、現実の友人とテレビで見る想像上の友人を区別できないという主張を検証した2002年の研究
総合的社会調査(GSS: General Social Survey)のデータ分析により、ある種のテレビを見ている人は友人関係に満足していることが明らかに
テレビを見ることは友人関係満足度に負の影響を及ぼすのでしょうか?
テレビを見るということは、それだけ友人に費やす時間が減ることを意味しますので、普通に考えるとテレビ視聴と友人関係満足度には負の関係が考えられそうですが、今回は真逆の結論を導き出した研究のご紹介です。
2002年の研究では、「ヒトは進化的適応環境(EEA)に存在しなかった存在を理解することが困難である為、現実の友人とテレビで見る想像上の友人を区別できない」という主張を検証しています。
総合的社会調査(GSS: General Social Survey)のデータ分析により、ある種のテレビを見ている人は友人関係に満足していることが明らかになりました。
この研究には、支持できるポイントも慎重になるべきポイントもあります。
支持できるポイントとしては、進化的適応環境に存在しなかったものを理解することが難しいというもので、これは進化心理学の文脈でもよく語られることです(VRが偽物の空間を映し出したとしても、その空間に対して個人は反応してしまうなど)。
慎重になるべきポイントとしては、番組の種類が複数検討されているが、一貫した結果が得られていないことやある番組では結果が出て、別の番組では結果が出ないことの説明が難しい点でしょう。
忘れてはいけないことは、多くの変数を扱えば、関係がなかったとしても相関が得られたり、有意な結果が得られるということです。
さて、本当に私たちはテレビの中の有名人を現実の友人と同じように扱っているのでしょうか?
参考文献:
Kanazawa, S. (2002). Bowling with our imaginary friends. Evolution and Human Behavior, 23(3), 167-171.