161ヵ国における身長差の変動
161ヵ国における身長差の変動を調べた2020年の研究
出生時平均余命とGDPはそれぞれ身長差(M/F)と正の相関があった(健康な国や裕福な国ほど男性は女性比べて身長が高い)
「遺伝か環境か」という話になると、どうしても文化普遍な形質を見つけることやある形質が文化普遍ではない証拠を見つけるかという極端な話になりがちです。
しかし、あらゆる形質が遺伝と環境どちらの影響も受けるという前提に立ち返ると、特定の形質の変動が異なる環境で見られる可能性を考えなければいけないでしょう。
161ヵ国における身長差の変動を調べた2020年の研究によれば、出生時平均余命とGDPはそれぞれ身長差(M/F)と正の相関があることがわかりました。
つまり、健康な国や裕福な国ほど男性は女性比べて身長が高いというわけです。
なぜこんな結果が得られるのでしょうか?
まず、身長という身体的な形質が遺伝の影響を受けるということは多くの皆さんは反対しないと思います。
それぞれの生物種は定められた一定の体長まで問題なく発達を続けます(チワワが突然3mになったり、ライオンが突然40cmになったりはしません)。
これは、オスとメスの体格の差にも言えることで、オスとメスの体格差がほとんどない種もいれば、オスとメスの体格が大きく異なる種もいます。
同じことを人間に置き換えてみると、私たちはホモ・サピエンス(・サピエンス)という種によって規定されている一定の身長までは発達しようとしますが、その身長は男性と女性でわずかに異なります。しかし、その差がどれだけ顕著に見られるかということは環境がどれだけその差を許容するか(死亡率が高かったり、GDPが低いなど環境が厳しい場合には元々持っている男性と女性の性差の限界まで発達しない)に依存するということです。
この話はとても興味深く、ある文化には性差が見られるけど、他の文化には性差が見られない(もしくは小さい)場合でも、特定の形質が進化とは無縁だったと断定することができないということを意味しています。
文化普遍な形質という話だけでなく、環境によってどう形質が変化するのかまで含めて考えていかなければいけないということです。
参考文献:
German, A., & Hochberg, Z. E. (2020). Sexual dimorphism of size ontogeny and life history. Frontiers in Pediatrics, 8, 387.