包括適応度からわかる遺産分配
1. 非血縁者より血縁者に多く分配
2. 妻は子どもに直接分配
3. 夫は妻が若ければ子どもに分配
4. 夫は妻の年齢が高ければ妻に分配
身内の誰かが亡くなると、遺産分配の話を避けては通れません。
遺産分配には進化心理学的な観点が介入する余地があるのでしょうか?
包括適応度が遺産分配のパターンについて説明してくれます。
適応度とは、個体がどれだけの子を残せるかという点に着目しますが、包括適応度は、その考えを血縁者(同じ遺伝子を持つ他の個体)にも拡大します。
つまり、我々は個人だけの成功だけでなく、血縁者の成功も視野に入れて行動するということです。
それを踏まえると、遺産分配は非血縁者より血縁者に対して多く行われるということになります。
さらに、夫と妻では異なる戦略を取るでしょう。
一般的に男性は歳を重ねても結婚のチャンスがありますが、女性はそうはいきません。
男性は年齢が上がるにつれて収入は増加しますが、女性は繁殖能力が低下します。
つまり、妻は夫に遺産を分配すると、その遺産を別の女性やその女性との間の子に使われる可能性があります。
夫の場合は妻の年齢が高ければ、妻に遺産を分配しても問題はないでしょう(その後に子どもに分配されるから)が、妻が若ければ子どもに直接分配するのが良いでしょう(新しい夫やその子どもへの投資に使われる可能性があるから)。
以上のことをまとめると、次のようになります。
遺産分配のパターン:
1. 非血縁者より血縁者に多く分配(血縁者は自分と同じ遺伝子を少なからず持っている為)
2. 妻は子どもに直接分配(男性はどんな年齢でも結婚のチャンスが高い為)
3. 夫は妻が若ければ子どもに分配(他の男性と結婚する可能性がある為)
4. 夫は妻の年齢が高ければ妻に分配(子どもに分配されるから)
遺産分配という一見複雑な行動も、実は包括適応度という観点から進化心理学的には説明がつくのです。
参考文献;
Smith, M. S., Kish, B. J., & Crawford, C. B. (1987). Inheritance of wealth as human kin investment. Ethology & Sociobiology, 8(3), 171–182. https://doi.org/10.1016/0162-3095(87)90042-2
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