共感のシミュレーションと鎮痛剤
2つの二重盲検プラセボ対照実験において鎮痛剤と共感の関係について検討した2016年の研究
アセトアミノフェンは他人の痛みに対する共感を減少させた
他人の痛みへの共感と自分自身の痛みの知覚は共通の処理であることを示唆
熱中してミステリードラマを見ていると、虫も殺せないような優しい人が意外と犯人であったりして、驚くことがあります。
そういったミステリードラマにおける驚きは、物語の緊張感や展開の面白さに加え、登場人物たちに共感しているからこそ生まれます。
私たち視聴者が登場人物に共感することで、物語の世界に没入し、自分自身がその場にいるかのような感覚を味わうことができるのです。
しかしながら、登場人物たちに対して全く共感できない場合もあります。
これは、私たち視聴者と登場人物たちの価値観や考え方が大きく異なるため、視聴者が感情移入することが難しいからかもしれません。
つまり、私たちが他者に共感する為には、他者の感情をシミュレーションする必要があるのかもしれないというわけです。
2つの二重盲検プラセボ対照実験において鎮痛剤と共感の関係について検討した2016年の研究によれば、アセトアミノフェンは他人の痛みに対する共感を減少させることがわかりました。
これは、冒頭の話と関連しており、他人の痛みへの共感と自分自身の痛みの知覚が共通の処理であることを示唆しています。
「他人の痛みを感じる為には自分も痛みを感じる必要がある」なんて、ロマンチックな話です。
今度、鎮痛剤を服用する時は、(普段の共感と同程度にする為には)自分が思っているより他者に共感する必要があると考えながら服用してみてはいかがでしょうか?
参考文献:
Mischkowski, D., Crocker, J., & Way, B. M. (2016). From painkiller to empathy killer: acetaminophen (paracetamol) reduces empathy for pain. Social cognitive and affective neuroscience, 11(9), 1345-1353.