病原体の蔓延と個人主義/集団主義の関係
病原体の蔓延と個人主義的価値観/集団主義的価値観の文化間差異を調査した2008年の研究
病原体の地域的な流行は集団主義と強い正の相関を示し、個人主義とは強い負の相関を示す
現在の病原体の流行よりも歴史的な病原体の流行が個人主義や集団主義とより強く関連する
皆さんは「集団主義」と「個人主義」という言葉について聞いたことありますか?
簡単に両者の違いを述べると、集団主義とは個人の利益よりも集団の利益を優先することで、個人主義とは集団の利益よりも個人の利益を優先することです(実際にそうするかと言うよりも、そういうふうに見える傾向だと考えてもらった方が良いかもしれません)。
厳密に両者を切り分けるのは難しいかもしれませんが、国によっては個人主義的な傾向が高い国もあれば、集団主義的な傾向が高い国もあります。
今回は、そんな個人主義/集団主義について考えてみましょう。
病原体の蔓延と個人主義的価値観/集団主義的価値観の文化間差異を調査した2008年の研究によると、病原体の地域的な流行は集団主義と強い正の相関を示し、個人主義とは強い負の相関を示すことがわかりました。
心理学の研究論文を読んだことがある方は、この時点でおかしい点に気づくかもしれません。
そう、集団主義と強い正の相関を示すということは、(個人主義と集団主義が対極にある概念だとすれば)個人主義と強い負の相関を示すということなので、わざわざ2回も似たようなことを言う必要がないのです。
しかし、この研究に限ってはそういうわけにはいきません。
なぜなら、この研究では病原体の地域的な蔓延と複数の文化的指標(個人主義傾向を測定する指標2つ、集団主義傾向を測定する指標2つの合計4つ)との関係を調査しているので、2回も似たようなことを言うことがとても重要なのです。
また、興味深いのは、現在の病原体の流行の指標よりも歴史的な病原体の流行の指標の方が個人主義や集団主義とより強く関連するということでした。
つまり、歴史的に病原体にさらされてきた人々ほど集団主義的な傾向が高くなるというわけです。
参考文献:
Fincher, C. L., Thornhill, R., Murray, D. R., & Schaller, M. (2008). Pathogen prevalence predicts human cross-cultural variability in individualism/collectivism. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences, 275(1640), 1279-1285.