配偶システムと精子の遊泳速度
配偶システムと精子の遊泳速度について検討した2008年の研究
チンパンジー、ヒト、ゴリラを比べてみると、精子の遊泳速度はチンパンジー(複雄複雌)が最も速く、次にヒト、ゴリラ(一夫多妻)の順に続く
皆さんは「精子競争」という言葉を聞いたことありますか?
精子競争とは、異性を巡る争いが精子レベルでも働くということを意味します。
今回は精子競争を種間比較(他の霊長類との比較)から考えてみましょう。
2008年の研究では配偶システムと精子の遊泳速度について検討しています。
精子競争は配偶システムが一夫多妻の種よりも複雄複雌の種で激しいと考えられています。
なぜなら、一夫多妻の場合では、オスがメスを独占してしまう為、精子競争が起こりづらく、オスが精子に投資することがそこまで大きな利益とならないからです。
一方、複雄複雌の種ではオスとメスが乱婚的に交配を繰り返しますので、精子に投資をすることがオスの繁殖成功にとっては非常に重要なわけです。
この予測を支持するように、先ほどの研究ではチンパンジー、ヒト、ゴリラを比べてみると、精子の遊泳速度はチンパンジー(複雄複雌)が最も速く、次にヒト、ゴリラ(一夫多妻)の順に続くことがわかりました。
私たちヒトでは、チンパンジーほどではありませんがゴリラよりは、精子が見えないところで競争を繰り広げているのです。
参考文献:
Nascimento, J. M., Shi, L. Z., Meyers, S., Gagneux, P., Loskutoff, N. M., Botvinick, E. L., & Berns, M. W. (2008). The use of optical tweezers to study sperm competition and motility in primates. Journal of the Royal Society Interface, 5(20), 297-302.