性的二型と絶滅の速度
甲殻類の化石を調査した研究によると、性的二型が大きな種(オスが繁殖に多く投資する種)はそうでない種に比べて絶滅率が10倍高いことが判明
性淘汰では配偶者獲得に有利な形質が選択される為(生存に有利な形質が選ばれるということではない)、集団の絶滅リスクを高めてしまうことがあるということ
生き物は自然淘汰と性淘汰によって(生存 or 繁殖に)有利な形質を集団中に広めることができますが、性淘汰についてはある欠点があることが指摘されています。
生存に必要な形質を環境が選択する自然淘汰と違い、性淘汰では異性が繁殖に有利な形質を選択します。
したがって、性淘汰では生存にとって不利な形質であっても異性が選んでしまうのなら、集団中にそのような形質が広まってしまうということです。
このように性淘汰の欠点を調べた2018年の研究によると、甲殻類の化石を調査した結果、性的二型が大きな種(オスが繁殖に多く投資する種)はそうでない種に比べて絶滅率が10倍高いことが判明しました。
性的二型とはオスとメスがどれだけ異なる形質を持つかということです。
クジャクのオスはメスにないような美しい羽を持っていますが、これも性的二型の一例と言えます。
つまり、性的二型が大きな種ではオスは繁殖に大きな投資を迫られるので、結果として生存への投資が犠牲になるわけです。
個体間の選択という点では有利な形質でも、種としては不利な形質であるという可能性を考慮しなければならない、なんとも不思議なお話です。
参考文献:
Martins, M.J.F., Puckett, T.M., Lockwood, R. et al. High male sexual investment as a driver of extinction in fossil ostracods. Nature556, 366–369 (2018). https://doi.org/10.1038/s41586-018-0020-7