早期ストレス、初潮、初産
2005年の研究によれば人生の初期に家族関係に問題があった(早期ストレスが高い)女性は初潮や初産が早いことが判明
リスクが高く不確実な環境では子孫を残す確率を最大化する為に早期に生殖を開始することが最適な生殖戦略である可能性を示唆
進化心理学の研究論文を読んでいると、今までなんとなく考えていた現象に意味があることを知り、感動することがあります(もちろん、仮説や理論を無批判に信用してよいわけではなく、既存の仮説や理論が将来否定されることもありますが...)。
例えば、「初潮」について考えてみましょう。
女性が初潮、つまり人生で初めての月経を経験する時、そこにはどんな意味があるのでしょうか?
もちろん、大人の体へと変化する、つまり子どもを産める体になっている状態と捉えるだけでもよいですが、初潮を迎える年齢(初潮のタイミング)のばらつき(個人差)を含めて考えてみるとより面白いことになります。
2005年の研究によれば人生の初期に家族関係に問題があった(早期ストレスが高い)女性は、初潮が早く、初産が早いことが判明しました。
これは、リスクが高く不確実な環境では子孫を残す確率を最大化する為に早期に生殖を開始することが最適な生殖戦略である可能性を示唆しています。
つまり、初潮や初産が早いかどうかは個人がその環境から受けるストレス量に影響されるというわけです。
なんとなく、初産は自分の意志で決められるもの、初潮は自分の意志で決められないものと考えていると、この結論は目から鱗かもしれませんが、どちらも生殖の早期開始と捉えると腑に落ちます。
皆さんも先入観を捨ててヒトについて考えてみると、思ってもみなかった発見に出会えることがあるかもしれません。
参考文献:
Chisholm, J. S., Quinlivan, J. A., Petersen, R. W., & Coall, D. A. (2005). Early stress predicts age at menarche and first birth, adult attachment, and expected lifespan. Human nature, 16(3), 233-265.