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「養子縁組」は異常なのか?

哺乳類と鳥類に見られる「養子縁組」


哺乳類120種、鳥類150種以上においてアロペアレンティングや「養子縁組」が見られる
このような種は子孫の数が少なく、親の投資レベルが高いなどK選択種で典型的に見られる特徴を有する傾向にある

進化心理学で度々話題に上がる「養子縁組」ですが、これは進化の観点からどう捉えると良いのでしょうか?


例えば、現代社会では異国の地の子どもを養子に取ることも可能であり、有名人が養子縁組を行うとニュースになることがあります。


一部の人たちが主張するように「養子縁組」は自身の繁殖適応度を犠牲にしてしまう進化心理学を理解していない人々によって行われる“愚かな”行動なのでしょうか?


それを考える前に、まずは「養子縁組」が“異常”なのか考えてみましょう。


1982年の古い研究になりますが、このレビューによれば哺乳類120種、鳥類150種以上においてアロペアレンティングや「養子縁組」が見られるそうです。


通常アロペアレンティングは親と他のメンバーによって行われる共同養育を指し、養子縁組というと親ではなく他のメンバーによる養育を指すと思われますが、本質的には「血縁関係を有しないメンバーが養育に参加する」という点では同じと言えるでしょう。


また、このような種は子孫の数が少なく、親の投資レベルが高いなどK選択種で典型的に見られる特徴を有する傾向にあることがわかりました。


実際には、餌や仲間、繁殖場所が少ないなど環境が厳しい場合に、若い個体が血縁個体を援助する為に大きな集団を築く結果、他のメンバーを養育する機会が増加することなど環境的な要因も他のメンバーによる養育を促すと考えられます。


しかし、重要なことはアロペアレンティングや「養子縁組」は少なくとも多くの種で見られる適応的な行動である可能性が示唆されるということです。


現代環境において、明らかに他人であると考えられる子どもを養子として迎え入れることが適応的かどうかは難しい問題ですが、少なくともヒトだけでなく多くの種においてこういった行動が見られるというのは興味深いのではないでしょうか?


参考文献:


Riedman, M. L. (1982). The evolution of alloparental care and adoption in mammals and birds. The Quarterly review of biology, 57(4), 405-435.

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