225の国と地域にまたがる20億人のFacebookユーザーのデータ
文化的距離(文化的な類似性)を定量的に測定した2022年の研究
225の国と地域にまたがる20億人のFacebookユーザーから収集した約60,000のトピック次元(関心)を分析
人口が30万人を超え、フェイスブックの普及率が5%を超え、世界価値観調査(WVS)にも含まれる国に限定すると、日本の文化に最も近い国はロシアやベラルーシであった(225ヵ国全てを含めると、中国が最も日本の文化に近い国)
私たちの生活はインターネットの世界と密接に繋がっています。
あらゆる情報がインターネット上を駆け巡っていますが、同時に私たち個人の情報がインターネット上に解き放たれています。
生活している上で使用するあらゆるアプリは個人情報を収集し、ユーザーの興味・関心・行動などを分析し、企業活動に役立てようとしています。
今回は、様々な手段を用いて個人から収集された膨大なデータがどのように心理学の研究に役立つのかというお話です。
文化的距離(文化的な類似性)を定量的に測定した2022年の研究を見てみましょう。
通常、心理学の分野で国ごとの文化差や類似性を測定するとなると、世界中の人々にアンケート回答をしてもらうということになります。
これは非常に高価で、回答には様々な制約が付く(大量の回答は期待できない)というような問題があります。
そこで、この研究ではすでに収集されているデータを分析しています。
そのデータとは、225の国と地域にまたがる20億人のFacebookユーザーから収集された約60,000のトピック次元(関心)です。
これは、通常の心理学研究では考えられないようなサンプル数ですし、扱っている次元も非常に膨大です。
結果を見てみましょう。人口が30万人を超え、フェイスブックの普及率が5%を超え、世界価値観調査(WVS)にも含まれる国に限定すると、日本の文化に最も近い国はロシアやベラルーシということがわかりました。
この結果は非常に意外で、論文内でもわざわざ言及されています。
しかし、225ヵ国全てを含めると、中国が最も日本の文化に近い国ということでしたので、解釈には注意が必要だと思われます。
また、この研究は分析も非常に豊富で、様々な変数(文化/言語/遺伝/宗教)との関連も調査し、妥当性を確認しています。
図も豊富なので、気になる方はぜひご確認ください。
参考文献:
Obradovich, N., Özak, Ö., Martín, I., Ortuño-Ortín, I., Awad, E., Cebrián, M., ... & Cuevas, Á. (2022). Expanding the measurement of culture with a sample of two billion humans. Journal of the Royal Society Interface, 19(190), 20220085.