セクシュアル・ハラスメントの認識、生活史戦略、演繹的推論課題の成績
セクシュアル・ハラスメントの認識と演繹的推論課題(ウェイソン選択課題)の関係を調べた2015年の研究
女性は男性よりもセクシュアル・ハラスメントの状況を不快と感じる傾向にある
女性は(88.2%)は男性(65.1%)よりも見返りのあるセクシュアル・ハラスメント(quid pro quo)の状況(シナリオの一部:私と一夜を過ごせば、昇進させてやる)を「社会的交換」ではなく「脅威」と捉える傾向がある
遅い生活史戦略を持つ人々はセクシュアル・ハラスメントの状況を不快と感じ、見返りのあるセクシュアル・ハラスメントの状況を「脅威」と捉える傾向がある
見返りのあるセクシュアル・ハラスメントの状況を「脅威」と捉えた人々は演繹的推論課題(ウェイソン選択課題)の成績が低かった
「セクシュアル・ハラスメント」と聞くと皆さんはどういうイメージを持ちますか?
「体を少し触る」くらいのスキンシップを思い浮かべる方もいるかもしれませんし、「無理やり相手との関係を迫る」レイプに似た行為をイメージする方もいるかもしれません。
今回は、セクシュアル・ハラスメントを人々がどう捉えているのかに始まり、生活史戦略との関係や演繹的推論課題での成績について研究した2015年の研究のご紹介です。
まず、この研究によれば、女性は男性よりもセクシュアル・ハラスメントの状況を不快と感じる傾向にあることがわかりました。
また、見返りのあるセクシュアル・ハラスメント(quid pro quo)の状況(シナリオの一部には私と一夜を過ごせば、昇進させてやるという文章が含まれていました)を人々が「社会的交換」と捉えるのか「脅威」と捉えるのかについて検討されています。
その結果、女性は(88.2%)は男性(65.1%)よりもこのような状況(QPQ)を「社会的交換」ではなく「脅威」と捉える傾向があることがわかりました。
さらに、生活史戦略との関連を見てみると、遅い生活史戦略を持つ人々はセクシュアル・ハラスメントの状況を不快と感じ、見返りのあるセクシュアル・ハラスメントの状況を「脅威」と捉える傾向があることがわかりました。
最後に、見返りのあるセクシュアル・ハラスメントの状況を「脅威」と捉えた人々は演繹的推論課題(ウェイソン選択課題)の成績が低かったようです。
セクシュアル・ハラスメントを女性や遅い生活史戦略を持つ人々の方が不快に捉えていることは、比較的少数の生殖イベントに大きな資源を投入することがこのような認識と関連すると考えられます。
これは、見返りのあるセクシュアル・ハラスメント(quid pro quo)の状況を社会的交換と捉える場合も同様です。
比較的少数の生殖イベントに大きな資源を投入する人々(女性や遅い生活史戦略を持つ人々)にとっては、それらはたとえ見返りがあっても脅威であるという認識と関連しやすいのです。
また、演繹的推論課題(ウェイソン選択課題)の成績が一部の人々(見返りのあるセクシュアル・ハラスメントの状況を「脅威」と捉えた人々)で低かったことは、ウェイソン選択課題のような課題の成績が社会的交換の文脈で向上するという重要な知見を裏付けています(今回の研究で扱われたバージョンのウェイソン選択課題や理論的背景:親の投資理論などについては参考文献をご確認ください)。
参考文献:
Dillon, H. M., Adair, L. E., & Brase, G. L. (2015). A threatening exchange: Gender and life history strategy predict perceptions and reasoning about sexual harassment. Personality and Individual Differences, 72, 195-199.