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自然淘汰はがんを減らす?

The index of natural selection opportunityとがんの発生率


世界173ヵ国のWHOの統計を利用して自然淘汰とがんの発生率の関係を調べた2018年の研究
淘汰の機会を示す指数とがん発生率には強い逆相関が見られる(自然淘汰が働く機会が低い国ほどがんの発生率が高い)
日本は自然淘汰がほとんど働いていない国(173ヵ国中4位)
27種類のがんのうち15種類は6つの潜在的な交絡因子を考慮しても有意であり、12種類のがんは外因に大きく起因
自然淘汰が最も働いていない10ヵ国と自然淘汰が最も働いている10ヵ国の平均がん発生率の比は遺伝的背景が少ないがんの平均で2.1、遺伝的背景の強いがんの平均では5.7

日々論文を読むことは新しい知識を与えてくれるのと同時に、思ってもいない観点から物事を理解することに繋がることがあります。


今回は、そういう考え方もあるのか!と思ってしまうような論文、例えば、がんの発生率について考えてみましょう。


日本では、テレビCMや保険などで「がん」がたくさん取り上げられますが、なぜ日本にはがんが多いのでしょうか?


こんなにも医療が発達した国で、今だにがんで亡くなる人が多いのはなぜでしょうか?


世界173ヵ国のWHOの統計を利用して自然淘汰とがんの発生率の関係を調べた2018年の研究では淘汰の機会を示す指数とがん発生率には強い逆相関が見られる(自然淘汰が働く機会が低い国ほどがんの発生率が高い)ということが指摘されています。


また、173ヵ国のデータを詳しくみてみると、日本は自然淘汰がほとんど働いていない国(173ヵ国中4位)だと言うことができます。


27種類のがんのうち15種類は6つの潜在的な交絡因子を考慮しても有意であり、12種類のがんは外因に大きく起因していることもわかっており、自然淘汰が最も働いていない10ヵ国と自然淘汰が最も働いている10ヵ国の平均がん発生率の比は遺伝的背景が少ないがんの平均で2.1、遺伝的背景の強いがんの平均では5.7でした。


つまり、日本のような死亡率がとても低い国、詳しく言えばほとんどすべての個体が生殖期間終了まで生存する為に、死亡率の差による自然選択の機会がほとんどない国では有害な遺伝子が排除されずに蓄積されやすいということです。


冒頭の疑問に戻ると、「こんなにも医療が発達した国でなぜがんが多いのか?」というより「こんなにも医療が発達した国だからこそ、こんなにもがんが多い」ということなのです。


参考文献:


You, W., & Henneberg, M. (2018). Cancer incidence increasing globally: The role of relaxed natural selection. Evolutionary applications, 11(2), 140-152.

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